2007年11月16日金曜日

エコビレッジ訪問記フランス3

食事の後、だらだらと中庭で過ごす人びとを眺めながら、ヨハンとエコビレッジの運営の難しさについて話をした。

「重要でかつ難しいのはメンバーの意思共有。自分が何をしたいのかを明確に他者に伝えること、ビジョンを描いて共有できればアプローチはそれぞれ違っていてもいいんだ」と彼。週に一度の全体ミーティングは欠かせない。住民になるためにはボランティア体験の後、1年の試行期間を置いて双方の意思確認をする。全員無給だが、食事、住環境、保険はコミュニティが補償している。年間2~3週間の休暇もとることができる。

住民はここの運営が忙しく、外で働いて収入を得ることはほとんど不可能。
「収益をあげて住民に給料を払う計画はないの?」
「今はビジターの宿泊費だけが主な収入で、給料が払えるほどにはならない。野菜や鶏、ヤギは今のところは自給用だけど、将来は乳製品の販売も計画している」
スリムな体格と銀縁眼鏡のヨハンは、もともとコンサルティング会社に勤務していたビジネスマンだけあって事業センスもありそうだ。


「収益も伸ばしたいけど、まずは生活そのものを大事にしたいんだ」と言う彼に、わたしは「現金収入がないことに不安はないんですか?」と、少し失礼だったかなと思われる質問をしてみた。

ここでは食住という最低限必要なことがハイレベルに整っている。健康で安全な生活と豊かな人間関係があるということが、人生でもっとも大切なことじゃないかな。老後のことまでは考えていないけど、ここでは若い人も家族を持って参加しているよ」 

モノが整っていても必ずしも健康で安全な生活をおくっているとは言えない。ましてや豊かな人間関係はお金では買えない。でも、お金がなくても幸せなんて現 実的にあり得るのだろうか。もしかしたら、手放せないと思い込んでしがみついているものこそ役にたたないものかもしれない。

彼は今日から1週間のホリデーでオランダの実家に帰るという。「人生でもっとも大切なこと」という言葉を頭の中で繰り返しながら、ヨハンの車を見送った。

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