97年にトニー・リンチの建てたラウンドハウスは、藁や土など自然素材を用いたエコハウスとして雑誌やウェブでもよく紹介されているが、ペンブルクシャー州の国立公園事務所はお気にめさなかった。彼らは建物の取り壊しを要求、それに対してトニーは建築許可を求めて長年闘争を続けている。もっともこれらのストーリーと、現在のコミュニティ住民に直接の関係はない。2002年、ブリスディア・マウルはラウンドハウス組とは分かれて別組織をたちあげ、住宅組合から借地・借家する形で現在の生活を営んでいる。住民は大人10人、子ども5人、20代後半から40代前半の子育て世代が中心で、みな明るく朗らか、せわしく忙しそうにしていた。「過激」な印象はまったくない。
案内してくれたエリカはリラックスしたムードの女性で、食事の支度をしながらいくつかの質問に応えてくれた。「街の人に理解してもらうのはたしかに時間がかかるわね。でも日常の買い物や子どもの学校を通して人間関係ができたりして、だんだん変化していると思うわ。わたしたちは極端な主義主張を持っているわけでもなく、他の人たちとそう変わらないと思うのよね。ここに来たの?かれこれ7年目かしら。多少の人の出入りはあるけれど、新しい風が入るのはいいことだと思っているわ」
私は友人のクリスと週末だけのウーファーとして滞在し、コモンミールにも参加させてもらった。夕食は月曜から金曜まで一緒に全員そろって食べるという。隣に座ったポールがここの仕組みを説明してくれた。
現在のブリスディア・マウルは問題のラウンドハウス・トラストと土地を2分し、約80エーカーの土地と建物、畑を所有している。野菜はほとんど自給。ヤギや羊、鶏も飼っている。週に一度のコミュニティ会議のほかに、外部からファシリテーターを招いてワークショップの研修を行うこともある。コースやイベントも実施しているが、収益を目的として恒常的に行う意志はないという。「お金が絡んだり、常にゲスト対応をしなくてはいけなくなると、コミュニティの生活に影響が出るからね」あくまでも住環境を守ることが優先とポール。
特に小さなコミュニティでは、エコライフとビジネスの両立は難しいのだろう。ここでは幼い子どもが多いこともあるのか、コミュニティと同時に家族の時間を大切にしている様子が伺われた。食事がすむと、リビングでは子どもたちが学芸会の衣装を着てはしゃいでいたが、早々にそれぞれの部屋に引き上げ、たちまちコモンハウスはひっそりと静まった。
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