2007年11月18日日曜日

エコビレッジとスピリチュアリティ

「持続可能なライフスタイルの模索」はエコビレッジのひとつのテーマだ。再生可能なエネルギー技術や環境にやさしい住宅デザインなどいわゆるエコテクノロジーはその実現のためのツールである。しかし、サスティナブルなライフスタイルやコミュニティを構築するには、技術だけでは解決できない問題がたくさんある。住民ひとりひとりの意識や仲間との関係性を、オープンでポジティブな状態で維持することもそのひとつだ。

フィンドホーンはしばしばスピリチュアル・コミュニティとして紹介されるように、その意識形成や集団結束にスピリチュアリティが極めて重要な位置を占めている。フィンドホーンの創始者のひとりアイリーンは「神からの啓示」を受けこの地で活動を始めており「
自然は人間の生命にとって重要な情報を持っており、自然とともに働くことを通じてその情報を学ぶことができる」と説いている。しかし、彼らの神は決してキリスト教や特定の宗教を意味しているわけではない。むしろ仏教や先住民の伝統的な宗教への興味関心が高く、受講生の中にも、キリスト教、イスラム教、仏教、無宗教いろいろな人がいた。

スピリチュアリティは私の苦手とするところで、十分理解できたか正直自信がない。特定の宗教にもとづく神ではなく、「人間の力を超えた崇高なものを自然の中に認め、それら対する畏敬の念を忘れずに謙虚に学ぶ精神」が私なりのせいいっぱいの解釈である。高度に工業化された社会では、人間があたかも自然をすべて管理できるかのようにふるまい、目に見えるもの、数値で評価できるものだけでものの価値を計っている。科学や経済のものさしでは計ることのできない価値を求める態度こそ、現代日本でももっとも欠けている視点ではあるまいか。

近代の環境問題はひとりひとりの意識を改革することなしに改善は難しい。また、集まって住むという生活環境中では、過去の伝統社会や企業組織の契約関係のような従来の社会構造とは異なる、民主的な意志決定のプロセスデザインが不可欠となってくる。

住民がお互いの違いを認め尊重し合いながら合意点を見つけていくには、自分の意見や感情を上手に表現し、また他人のそれも受け入れるオープン性を身につけることは肝要である。もちろん、感情を表現することが必ずしも常に正しいアクションとは限らない。しかし、感情の抑圧が人間性や人間関係に何らかのネガティブなインパクトを持つことも明らかだ。特に昨今の社会問題の背景には、十分に人間性が形成されず、他人の痛みを察することのできない人が増えていることがあるのではないだろうか。感情表現やコミュニケーションなんて訓練するものではないと思う人も多いだろうが、豊かな感情を育て、他人の感情も受け止めるためには安心してそれを表現できる機会が必要だ。

エコビレッジは「地球環境のため、コミュニティのため」だけではなく、「より人間らしく、より自分らしく」生きることを目指す人びとの集まりでもある。いろいろな意味で自分をオープンにしていくことは、その過程作業のひとつなのだろう。

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