2007年11月16日金曜日

エコビレッジの経済

これまで日本でエコ・ビレッジの取り組みが紹介されるとき、その焦点はおおむねエコ建築や自然エネルギーなど、環境テクノロジーという側面に当てられているように思う。しかしながら、エコ・ビレッジの基本理念は環境だけでなく、社会性、経済性そして精神性における持続可能性を視野にいれていることに留意し なくてはいけない。それら4本柱は相互に関連しあっていて、上手にそのバランスをとることが持続可能のキーと言ってもいいだろう。

環境的にすぐれていても 経済的に自立しないために破綻するケース、また健康な人間関係やコミュニケーションを欠いたために運営で行き詰まった取り組みは過去にたくさんある。もちろん、エコ・ビレッジの認定制などがあるわけではないので、国や文化、ロケーションや住民の構成によって、フォーカスは様々だ。

エ コ・ビレッジにおける経済問題はどこでも課題だ。私有財産を認めないような共産的なコミュニティもなかにはあるが、多くは家族単位の経済的自立が原則で、 一定量(20~40時間)のボランタリーな労働をコミュニティのために提供するというシステムが一般的なようである。多くの住民は外で若干の仕事をして現 金収入を得るか、貯金か公的な扶助(年金やひとり親家庭手当てなど)に頼っている。障がい者の生活と労働の場として作られたコミュニティは、政府から補助 を受けていた。助成金の取得はそれほど難しくなさそうだったが、公的な金が入るといろいろな制約を受けるという不満も耳にした。

500人 や1000人規模の大きなコミュニティでは、住民同士が各自できることを提供しあったり、地域通貨のような仕組みを導入したりして生活の足しにしている。 人が集まればいろいろな技術や知識も集まるものだ。たとえば元美容師や元庭師などが、自分の技能をコミュニティの中で活かしている。特別な技や資格がなく ても、子どもの世話や買い物、車の運転、ペットの散歩など日常生活に必要なことをシェアしたり、ときには仕事として報酬をもらっている。

身 寄りも友達もいない都会の単身者は、そのようなサービスを得るために常にお金が必要だし、儲けにならない地域ではサービス自体が成り立たないので全てひと りでしなくてはならない。コミュニティを作って住むこと、住民同士が互いに助け合い、意識的に技術や場をシェアすることで、よりお金のかからない生活が実 現することがわかる。核家族化がますます進む現代社会では、このような生活形態のメリットは大きいだろう。

人に頼んだり、頼まれたりする ことでトラブルが生じるのではと案じる人も多いが、このようなつながりは経済的であるばかりか、社会に埋もれている潜在的な能力を引き出し、安心して生活 できる社会をつくることにもつながる。いろいろな人がゆるやかに結び合うこと、少しの不便や煩わしさをむしろ楽しく共有することで、個人や家族単位では実 現できない、多様で合理的、そして人間的に豊かな暮らしが実現できるのではないだろうか。

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